わたしたち日本フィルの本拠地(ホーム)である杉並公会堂が、
リニューアルオープン後、1周年という節目の日を迎え、
6月1日に「杉並公会堂開館1周年記念コンサート」が開催されました。
【主催:杉並公会堂(株式会社京王設備サービス)】
1年前の2006年6月1日の開館直後、
ヨーロッパ公演を終えたばかりの日本フィルは6月3日・4日
の2日間にわたり「杉並公会堂開館記念コンサート」を行いました。
3年間もの間新しい公会堂の完成を待ち望んでおられた満場の
お客さま方から、鳴り止まぬ熱い拍手をいただいたことが鮮やか
に思い出されます。
今回は、6月1日「杉並公会堂開館1周年記念コンサート」に関するレポートをいたします。
《プログラム》
指揮:沼尻竜典(日本フィル正指揮者)
ヴァイオリン:漆原朝子
湯山 昭:子どもシンフォニー(作詩:中山 知子/合唱:杉並児童合唱団)
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブラームス:交響曲第2番
・5月30日(水)15:00~
ブラームス:交響曲第2番の練習。
ブラームスのエッセンスがギュッと凝縮された奥の深い作品です。
正指揮者・沼尻さんのタクトのもと、この日はオケはシンフォニー
だけをじっくりと練習しました。
19:00~湯山昭「子どもシンフォニー」のコーラスだけの練習。
杉並区在住の作曲家・湯山昭さんの作曲した管弦楽作品に、
奥様の朝倉慶子さんが児童合唱を作曲・加筆して完成された
“ご夫婦コラボ”作品です。
なんと、指揮の沼尻さんは、この作品の初演(1975年)の際、
小学5年生で児童合唱団のメンバーとして参加したそうです。
多くの人にとって、たいへん思い出深い作品なのです。
今回の合唱は、杉並児童合唱団の50名の皆さん。
沼尻さんはピアノを弾きながら、ご自分の経験にもとづいて熱心に指導し、
児童合唱団の皆さんは生き生きとした歌声でそれに応えました。
駆けつけた湯山さんご夫妻も「とてもすばらしい」と、
合唱団の仕上がりに満足のご様子。
本番に向け、期待が高まります!
・5月31日(木) 15:00~
ブラームス:交響曲第2番→ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番を練習。
楽器の音色のバランスや、ソリストの漆原朝子さんとの
コンビネーションを確認しながら練習は進められました。
↑19:00~湯山昭「子どもシンフォニー」の練習。
今日も湯山さんご夫妻の見守るなか、
オーケストラと最初の合わせの練習です。
夕方から外は、雷が鳴り響く大雨でしたが、
ホールの中はオーケストラの多彩な音色と子どもたちの歌声が
ファンタジーのように響きあっていました。
幅広い年齢層の子どもたちに対しここまでクオリティの高い
パフォーマンスづくりをされている先生方(志水隆先生、津嶋麻子先生)
のご指導にはほんとうに頭が下がる思いでした。
・6月1日(金)
ゆうべとは打って変わった晴天に恵まれ、
太陽も公会堂のお誕生日を祝っているようでした。
開場は18時30分。
↑ロビーには日本フィルをはじめ、この1年間に行われた
公演のポスターが掲示され、華やかな雰囲気。
日本フィル楽員もお祝いメッセージを公会堂が
用意してくださった大きな紙に寄せ書きしました。
↑演奏の前に、山田宏杉並区長によるごあいさつ。
「“東洋一のホール”とたたえられた旧杉並公会堂から
の伝統を受け継ぎ、これからも、新たな公会堂が杉並
のシンボルとして、日本フィルとともに区民の皆さまに
親しまれ愛される文化発信拠点として活動を展開していきたい
と思います」とのお話しに、会場からは大きな拍手が送られました。
ステージのフロントには、杉並公会堂が用意してくださった
たくさんの鉢植えのお花が並び、いつもと違う華やかな気分を盛り上げています。
さあ、いよいよコンサートの開演です。
◆ 湯山昭:子どもシンフォニー
↑おそろいの制服もりりしい杉並児童合唱団の皆さん。
きちんとあいさつをされる礼儀正しさが印象的です。
また、年齢の大きい団員の方がまとめ役になり、
集合→ゲネプロ→移動・着替え・食事→スタンバイ
→本番→解散 と、常に統制のとれたまとまりがあり、
さすが様々な本番をこなしてきた「児童合唱団の老舗」
の貫禄さえ感じさせる見事なものでした。
曲は、30年以上前に作曲・初演されたことを感じさせない
爽やかなみずみずしいたたずまい。
25分にも及ぶ大曲でしたが、杉並児童合唱団の皆さんは
集中力を途切れさせることなく、ダイナミックなオーケストラの
サウンドともに明るく元気良く歌い上げました。
コーラス練習・オケ合わせ・本番と3日間にわたり見守って
くださった湯山昭さん、また、この日のためにお出かけくださった
作詩の中山知子さんをステージ上にお招きし、
公会堂1周年にふさわしい名曲の再演をともに祝いました。
◆ ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
杉並区にお住まいの漆原朝子さんをお迎えして、
古今のヴァイオリンの名曲のなかでも人気の高い
ブルッフのコンチェルトが演奏されました。
ステージに登場した漆原さんはすらりとした真っ赤なドレス。
ご本人は柔和な笑顔がすてきなとても女性らしい雰囲気の方ですが、
演奏は、骨太でスケールの大きな堂々としたものでした。
会場のお客さまは、美しい音色で奏でられるヴァイオリンの
変幻自在な表情と、オーケストラが織り成す音のドラマに
熱心に聴き入っていました。
◆ ブラームス:交響曲第2番
牧歌的ななかにもほの暗いロマンティシズムが漂い
“ブラームスの「田園交響曲」”と称されるこの曲は、
オーケストラにとって演奏が至難なことでも知られています。
ドイツ風の迫力あるトゥッティと、柔らかい弱音のニュアンスは、
公会堂の響きの良さを実感していただくのにまさに
ふさわしかったのではないでしょうか。
シンフォニーが終わり、あたたかな拍手が続くなか、
沼尻さんが今回のプログラムにこめられたメッセージ
を客席へと語りかけます。
「杉並区在住の湯山昭さんが作曲した作品を杉並児童合唱団が歌い、
同じく杉並区在住の漆原さんがヴァイオリン独奏をされました。
また、公会堂1周年を記念して『ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番』、
公会堂2周年へ向けて『ブラームス:交響曲第2番』を演奏いたしました。
さらに未来を見つめて、
アンコールとして『ブラームス:ハンガリー舞曲第3番』を演奏いたします。」
軽妙でリズミカルなアンコールの響きは、
シンフォニーで張り詰めていた客席の雰囲気を和ませ、
終演時には鳴り止まぬ拍手がホールを包み込みました。
何度も続くカーテンコールは、お客さまの深い満足感を表しているようでした。
多くの方によって築かれたこのコンサート。
主催された杉並公会堂、
後援としてさまざまなお力添えをいただいた杉並区、
出演者や関係者、さまざまなスタッフの方々、
ご来場いただいた多くのお客様、そして日本フィル。
多くの人たちの想いがこめられ、
これから長い歩みを続けていく杉並公会堂の歴史に、
特別な1ページとして刻み込まれたと思います。
Jリーグのチームが本拠地(ホーム)で、
地元の多くのサポーターに支持されながら、
試合を行って勝利を重ね、
チームとしての底力をつけていくように、
日本フィルも杉並の地域の方々とともに、
着実に活動を広めてオーケストラとして発展・飛躍していきたいと、
あらためて身の引き締まる思いのする一夜でした。